現代の触感 ギャラリーイセヨシ2002
素材との会話(コミュニケーション) 尾崎眞人(京都市美術館学芸課長)
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作家との会話のなかで『石が好きになった』という意味の言葉を訊いた。話をしていて、作家の言葉の理由が、石を抱いたからだと思えてならなかった。 作家は魚などの具象形態も作品にしていたし、かつてはバランスや空間の問題ををテーマに個々も試みたりもしている。一方では1996年に『触覚/モジュール』と題した一連の作品を展開している。この作品は、作家の身体の一部をスケール(ものさし)にしたところに、意味がある作品であった。単なる目測としてのスケール(ものさし)ではなく、身体の重量を可視化したスケール(ものさし)であったり、押し付けられた二の腕や足の圧迫感を可視化したスケール(ものさし)であった。しかも作者にとっての問題は、ただ重量にあったわけではない。タイトルの『触覚』の結果としての『窪み/受け皿』ということが問題となった。それは作品のもつ『窪み/受け皿』が、殊更身体性を意識させる形態に誇張されてはいないからである。この『窪み/受け皿』の意味は、作者にとってどのような意味があるのだろうか。 思うに『触覚』の残像ならぬ『残覚』が形成させる形態である。そこには工芸とは異なる『受ける』という立体の新たな空間意識が展開されているのではないだろうか。
あえて言えば水を張った『窪み/受け皿』に空間があるのではなく、その上に『仮想空間』の存在があることをも、吉村サカオの作品は見る者に与えてくれる。
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現代の触感 In touch with the present 2002 GALLERY ISEYOSHI
宮田 徹也 121、展評 吉村サカオ彫刻展
10月5日〜11日 OギャラリーUP・S
吉村サカオは1956年生まれ、1982年多摩美術大学卒業、1984年同大学院修了。修了時
から個展を開催、グループ展も多数。Oギャラリーは2015年から。今回吉村は主に大理石
を素材とした作品WO14点、出品した。
吉村によると正面の二つの作品は、絵画から浮かび上がってきた様子をイメージしている。
確かに見たことのない感覚である。立体を平面に閉じ込める絵画と平面を立体に起こす彫刻
の違いの問題は、未だ解決を見ないので追及すべき問題である。
そのような視線を携えて吉村の多の作品へ目を投じると、我々は立体NO世界に本当に生きて
いるのか。もしかしたら形而上の世界でさえ迷っているのだけではないのかと分からなくなってくる。
吉村の作品の形は、それほどまでに既視と未知に塗られている。
そのような吉村の作品は、触れることが許されている。実際に触れてみると、大理石のひんやりとした感覚が人肌のように懐かしい。撫でていくと、心に言葉にはならない感情が泉のように湧き出てくる。そして、色や形が全く気にならなくなっていくのだ。
私は最近、木村重信の各500貢、全8巻の全集を読み終えたところだ。木村を読んだ目的
は、先史美術の研究であり、『美術始源』『はじめにイメージありき』『民族芸術学』で
あったのだが、木村は現代美術、デザイン、茶と幅広い論考を残す人物だと初めて知った。
木村もまた触れる美術を提起し、美術館のあり方そのものを問いかけている。しかし、木村
の名前は既に忘れさられているし、特に関東の人間は、京都や大阪を中心に活動していた
木村の偉大さを知らないのではないだろうか。
このように、近代の問題をなかったことにして新たな時代に直面することは不可能である。
近代で、何も解決していない問題を掘り下げ、何度も考察を繰り広げることは古いことで
なく、今、最も必要な研究態度ではないかと私は考えている。
そのように発想していた際に立ち会った吉村の展覧会は、忘れられない体験となった。
これからも吉村の彫刻に、指をなぞりたい。
宮田徹也(みやた てつや)1970年生まれ。高校留年、1年生3回2年生3回中退、
和光大学卒、2002年横浜国立大学大学院修士課程修了。現在、嵯峨美術大学客員教授、
日芸美術学部非常勤講師。図書新聞、週刊新聞新かながわなどに寄稿。
プロフィール
1956 東京都品川区生まれ
1982 多摩美術大学卒業
1984 多摩美術大学大学院修了
第9回神戸須磨離宮公園現代彫刻展エスキース
『個展』アートギャラリー環(日本橋室町)
1985 遊べる彫刻展(横浜市民ギャラリー)/横浜大通り公園野外彫刻展
1986 『光と水』ギャラリースペース21(新橋)/青山一番街サンライズ彫刻展(青山一丁目)
第71回二科展<特選>以後1989年まで(東京都美術館)
EXE彫刻展 以後1990年まで(代々木アートギャラリー)
芝浦アートフェスティバル『PARTY-1』東芝本
1987 青山ビル彫刻展(青山一丁目)
1988 『個展』ギャラリー山口(銀座)
1989 光のオブジェ 京二画廊(京橋)
わんぱく王国彫刻展(船橋)
1990 『個展』京二画廊(京橋)
『PARTY-5』東芝本社ビル
1991 風の造形展(墨田リバーサイドギャラリー)
1993 『個展』ART BOX(たまプラーザ)
1994 第6回現代日本具象彫刻展(千葉県立美術館)
1996 『個展』ART BOX(たまプラーザ)
1997 Truss97 ギャラリーイセヨシ(銀座)
1998 甲府まちなかの彫刻展(佳作)
Truss98 ギャラリーイセヨシ(銀座)
1999 魅せられし素材展 ギャラリーフレスカ(新宿百人町)
イセヨシアニュアル『石』ギャラリーイセヨシ(銀座)
2000 魅せられし素材展 ー 新宿•三島•水戸
『個展』アートギャラリー環(銀座)
『個展』ギャラリーイセヨシ(銀座)
2001 Plow か・た・ち NC artギャラリー(京橋)
風士・おもてなし・CHA CHA CHA ギャラリー403(銀座)
『個展』NC artギャラリー(京橋)
2002 『個展』現代の触覚 ギャラリーイセヨシ(銀座)
『個展』ギャラリーニレイ(溝口)
2003 倉敷まちかどの彫刻展エスキース
Kame+3展 ギャラリーバルコ(亀有)
2004 茶事を通じてのアートCHA CHA CHA ギャルリーワッツ(南青山)
CHA CHA遊び ギャラリーニレイ(溝口)
夏の新宿大茶会(西新宿パークタワーOZONE)
2005 キッコーマン亀づくし キッコーマンKCCギャラリー(西新橋)
『刻の光』潘微(書)吉村サカオ(石)a/h studio(自由が丘)
2006 茶事を通じてのアートCHA CHA CHA ギャルリーワッツ(南青山)
花•楽・茶 ギャラリー花よろず(目白)
かお・いろいろなかお a/h studio(自由が丘)
2007 五刻豊穣 Gallery銀座一丁目
彫刻Gallery selection2007 Gallery銀座一丁目
2008 『個展』起源回帰 ギャラリー403(銀座)
あーとde CHA CHA CHA つきじtassぎゃらりー若松屋
かたち展 ギャラリー健(中浦和)
『サカオ ト タカコ』 ギャラリージ・アース(鎌倉)
2009 至福之刻 ギャラリー403(銀座)
非売品展 ギャラリースペース游(相模原)
2010 『個展』石•音•感 ギャラリー健(中浦和)
2011 『個展』起源回帰 小松石のカタチ ギャラリー403(銀座)
2012 西さがみ美術交流展 小田原市民会館(小田原)・『サカオ ト タカコ』 ギャルリ梦心坊(市原)
2013 『個展』手の中の宇宙 ギャラリー403(銀座)・ 韓日交流展(韓国清州)
『サカオ ト タカコ』タイホウ建設ショールーム(品川区二葉3)
2014 『静寂と微笑み』吉村サカオ・吉村貴子彫刻展 古民家ギャラリーWEARCH(姫路市網干区)
2015 『個展』サカオ カオス OギャラリーUP・S(銀座)
2016 『流動体』川越三郎・吉村サカオ彫刻展 ギャラリー403(銀座)
2017 第4回湯河原・真鶴アート散歩 蕗-RO -
2018 『個展』萠ゆる 吉村サカオ彫刻展 ギャラリー403(銀座)
木漏れ日の庭にて 吉村サカオ・吉村貴子 彫刻展 ギャルリ梦心坊
2019 Stone Glass Green 吉村サカオ・吉村貴子 彫刻展 ギャラリールヴァン
「彫刻と暮らす。」吉村サカオ・吉村貴子 彫刻展 タイホウ建設ショールーム
2020 『個展』無限遠 OギャラリーUP・S(銀座)
2022 壁11㎡の彫刻展#6 いりや画廊(北上野)
2023 『個展』ヒカリ・ヲ・オル OギャラリーUP・S(銀座)
パブリックコレクション
市原市八幡支所・山梨県鰍沢町大法師公園・荒川区日暮里南公園・東大和市清水神社
足立区梅田堀親水緑道・ 籠原駅南口アゴラ噴水モニュメント・ 亀有駅南口バスロータリー・上越市高田教会 日暮里リーデンスタワー・立川アートアベニュー・朝霞 冨善寺・鳴子ホテル天神
さいたま新都心ブリランテ武蔵野・イニシア南千住・ プラウド柏ディアージュ・プラウド浦和岸町6丁目
銀座 健康院クリニック・アリア恵比寿・新豊洲SKYZ ・世田谷千歳台ガーデン&レジデンス
パークホームズ志木ザレジデンス・品川区二葉、蛇窪神社・クレヴィア東京八丁堀・ アトラス品川中延
パークホームズ大倉山ガーデン・法密稲荷社・大原不動・京都祇園花見小路Minn Gion
みなとみらいヒルトン横浜ホテルロビー